白をつぶせ! ~企画展開催まで~

 強烈なメッセージとともに口火を切られた、企画展「白をつぶせ!」。ホワイトキューブ(※)を無垢なキャンバスに喩えたこの展示は、染まる色によってその姿を刻一刻と変える。今回は企画展チームのメンバー4名に取材し、企画展開催までの道のりを追った。


—— 展示空間を真っ白なキャンバスに喩え、展示作品が増えていくことによって展示空間=キャンバスが塗りつぶされてゆく。この展示の案はどのようにして生まれたのでしょうか。

アスラスライム メンバーと顔合わせを行った後、2回目の会議でそれぞれ展示の案を出し合いました。このメンバーなら大きなことができるという期待もあり、展示の案を出し合った会議は特に盛り上がりましたね。示し合わせてもいないのに、みんなパワーポイントでプレゼンの準備までして。

りゅう 鑑賞者をアーティストと捉え、作品を描き足していく参加型の展示の案や、僕たち自身の自己紹介をしようという展示の案。様々なアイデアが出ましたね。最終的にはタカハシさんの案に決まりました。

—— 展示に対するアプローチにも個性が出ますね。タカハシさんはどういった意図でこのような案を?

タカハシ 企画展を開催するにあたって、何か可塑性のある展示をやりたいと考えたのが始まりです。最初は「みんなで作る展示空間」という仮題をつけていました。他の展示と差別化する上でも、会期中に作品が増える展示というのはあまりないですよね。

—— 展示空間全体がひとつの大きな作品のようでもあり、生き物のようでもある。不思議な展示ですね。

りゅう 展示のタイトルは模造紙を広げて、皆で書き出して決めました。アスラスライムさんが特に生き生きとしていましたね。

アスラスライム とにかく楽しかったです。キャンバス、塗る……身近な言葉から発想して、色の名前を使用したタイトルにしました。

—— 「白をつぶせ!」というタイトルは、アーティストに対する檄(げき)のようにも感じられますね。強いメッセージ性がある。

ぽぶこ タイトルが決まってからは、作りこみの作業が続きました。メンバー同士で意見がぶつかることも多くて、こりゃいかんと。(笑)

りゅう アスラスライムさんと僕がまずぶつかった。

アスラスライム この展示で私は「いかに開かれているか」ということを一つ大事にしたかったのですが、例えば、参加者を筑波大学の学生に限定するかどうか、アーティストをどの段階で組み込むか……そうした小さな要素一つ一つが展示の方向性を左右する。メンバーそれぞれが何を大切にするか、擦り合わせるのがとても大変でした。

—— いざ展示を開催するにあたって、不安はありましたか。

ぽぶこ ひとりよがりなんじゃないか、これでいいのか、という不安はいつも付きまとっていましたね。はじめての企画展で、未知数なことも多くありました。

アスラスライム でも展示を作りこんでいく中で、「やればできる」と自信につながったことも多いです。そして実際に展示が完成して、期待が確信に変わった。

—— 実際に開催された企画展「白をつぶせ!」は、非常に充実した展示になりましたね。作品によって展示空間が変化していっただけでなく、展示空間の影響を受けて変化した作品もあったのが印象的でした。

《face 0710》ヰユ

展示空間に合わせ、キャンバスの穴から覗く壁面に作者が描写を施した。


アスラスライム 私たちが作品に寄り添うように意識的に努力していたから、このような相互作用が生まれたのかもしれないです。

タカハシ いざ作品が来てみてから、どのように展示するのがよいかをアーティストと一緒に考えました。私たち自身も作品を作るように、対等な視点で。

りゅう 何より、参加者の満足度が高かったのが良かったです。アンケートでは「今回の企画展は、『鑑賞者も筑波大生であれば、誰でも自由に展示できる』という趣旨の展示でしたが、自分も展示したいと思いましたか?」という質問項目を設けていました。これには多くの方が「自分も展示したいと思った」という回答を寄せてくださいました。僕たち企画展チームやアーティストだけでなく、鑑賞者も主体として取り込むことができたというのは大きかったです。

ぽぶこ この企画展を通して、自分一人ではこれまで見ることのできなかった世界を見ることができました。企画展「白をつぶせ!」での経験を通して、秋に企画している新しい展示ではいったいどんな景色がみられるのか。とても楽しみです。


 真っ白なキャンバスは無数の色で埋め尽くされた。それらはやがて混ざり合い、大きなうねりとなっていく……。秋には新たな企画を控えているという企画展チーム。彼らの躍進に今後も期待したい。


※ ホワイトキューブ:ギャラリーや美術館で一般的に用いられる、白い立方体のような展示空間のこと。


企画展チーム アスラスライム、タカハシ ナツミ、ぽぶこ、りゅうの4名のアーティストで構成されたチーム。2021年7月より企画展「白をつぶせ!」。秋には新しい企画展を計画している。



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